チャートを見てまず最初に確認することは、相場の状況や方向性です。
でも、チャートを見ていると小さな値動きに惑わされて、本当のトレンドが見えなくなることがありませんか?
そんな時に役立つのが「ZigZag(ジグザグ)」です。このインジケーターを使えば、相場の大きな流れや方向性を一目で把握できるようになります。
今回は、ZigZagインジケーターの基本から実践的な使い方まで、分かりやすく解説していきます。
ZigZagインジケーターとは?
ZigZagは、MT4やMT5に標準で搭載されているインジケーターです。「ジグザグ」という名前の通り、ジグザグした線でチャート上に表示されます。
ZigZagの最大の特徴は、相場のノイズ(小さな値動き)を取り除いて、重要な高値と安値だけを線で結んでくれることです。
ZigZagの主な機能
- 重要な高値・安値を自動で判定
- 小さな値動きを無視して大きなトレンドを表示
- サポートライン・レジスタンスラインの引き方をサポート
- 相場の転換点を視覚的に把握
まるで相場の「骨組み」を見せてくれているようで、多くのトレーダーに愛用されています。
ZigZagの仕組みと計算方法
ZigZagインジケーター仕組みや計算方法を、簡単に説明します。
基本的な仕組み
ZigZagは、設定した条件に基づいて「意味のある高値・安値」を探し出します。そして、それらの点を線で結んで表示します。
例えば、10pipsの値動きがあった時だけ新しい頂点を作るように設定すれば、10pips未満の小さな値動きは無視されます。
計算の流れ
- チャート上で一定以上の値動きがあった点を探す
- その点が本当に高値・安値として意味があるかチェック
- 条件を満たした点同士を線で結ぶ
- 新しい値動きが発生するたびに線を更新
この計算により、相場の「本当の動き」だけを抽出できるのです。
パラメーター設定の基本:Depth、Deviation、Backstepの意味
ZigZagインジケーターには3つのパラメータがあります。それぞれの意味を理解して、自分のトレードスタイルに合わせて調整しましょう。

Depth(深度)
デフォルト値:12
Depthは「何本のローソク足を振り返って高値・安値を判定するか」を決める設定です。
- 数値を大きくする → より長期的な視点で高値・安値を判定
- 数値を小さくする → より短期的な視点で高値・安値を判定
例:Depth=12の場合、過去12本のローソク足の中で最も高い・低い値を基準にします。
Deviation(偏差)
デフォルト値:5
Deviationは「どの程度の値動きがあれば新しい頂点として認識するか」をパーセントで設定します。
- 数値を大きくする → 大きな値動きだけを重視(線が少なくなる)
- 数値を小さくする → 小さな値動きも重視(線が多くなる)
例:Deviation=5の場合、5%以上の値動きがあった時に新しい頂点を作ります。
Backstep(後退)
デフォルト値:3
Backstepは「新しい頂点を作る際に、直前の頂点からの最小距離」を設定します。
- 数値を大きくする → 頂点同士の間隔が広くなる
- 数値を小さくする → 頂点同士の間隔が狭くなる
この設定により、頂点が密集しすぎることを防げます。
初心者におすすめの設定
最初はデフォルト設定(12, 5, 3)で使い始めることをお勧めします。慣れてきたら、以下を参考に調整してみてください。
- 短期トレード重視:Depth=8, Deviation=3, Backstep=2
- 長期トレード重視:Depth=20, Deviation=8, Backstep=5
ZigZagを使ったトレンド、相場の見分け方
ZigZagインジケーターを使えば、相場のトレンドを簡単に読み取ることができます。
上昇トレンドの見分け方
ZigZagの線が以下のパターンを示している時は上昇トレンドです。
- 高値が切り上がっている:新しい高値が前の高値より高い
- 安値も切り上がっている:新しい安値が前の安値より高い
このパターンが続いている間は、買いエントリーを検討するのが基本です。
下降トレンドの見分け方
ZigZagの線が以下のパターンを示している時は下降トレンドです。
- 高値が切り下がっている:新しい高値が前の高値より低い
- 安値も切り下がっている:新しい安値が前の安値より低い
このパターンが続いている間は、売りエントリーを検討するのが基本です。
レンジ相場の見分け方
以下の状況ではレンジ相場(横ばい)と判断できます。
- 高値と安値が一定の範囲内で推移
- ZigZagの線が上下に振れているが、全体的には横向き
レンジ相場では、上限で売り、下限で買う逆張り戦略が有効です。
トレンド転換のシグナル
ZigZagが以下のような状態になったら、トレンドが転換することがあるので要注意です。
1. ダブルトップ・ダブルボトムの形成
ダブルトップ(二番天井)
ダブルトップは上昇トレンドの終わりに現れる反転パターンです。2つの高値がほぼ同じ水準で形成され、間に明確な安値(ネックライン)があります。2つ目の高値から下落し、ネックラインを下抜けすると売りシグナルとなります。

ZigZagを使った確認方法:
- ZigZagの線で2つの高値がほぼ同じレベルにあることを確認
- 2つの高値の間の安値(ネックライン)を特定
- ネックラインを下抜けた時点で下降トレンドへの転換を示唆
ダブルボトム(二番底)
ダブルボトムは下降トレンドの終わりに現れる反転パターンです。2つの安値がほぼ同じ水準で形成され、間に明確な高値(ネックライン)があります。2つ目の安値から上昇し、ネックラインを上抜けすると買いシグナルとなります。

ZigZagを使った確認方法:
- ZigZagの線で2つの安値がほぼ同じレベルにあることを確認
- 2つの安値の間の高値(ネックライン)を特定
- ネックラインを上抜けた時点で上昇トレンドへの転換を示唆
2. 三角形パターンのブレイク

上昇三角形
上昇三角形は、高値が水平線で結ばれ(抵抗線)、安値が右上がりの線で結ばれる(支持線)パターンです。価格が抵抗線を上抜けすると強い上昇シグナルとなります。買い圧力が徐々に強くなっていることを示しています。
下降三角形
下降三角形は、安値が水平線で結ばれ(支持線)、高値が右下がりの線で結ばれる(抵抗線)パターンです。価格が支持線を下抜けすると強い下降シグナルとなります。売り圧力が徐々に強くなっていることを示しています。
対称三角形
対称三角形は、高値と安値の両方が収束するパターンです。どちらの方向にブレイクするかは不明なため、ブレイク後の方向についていく戦略が有効です。
ZigZagを使った三角形パターンの見つけ方:
- ZigZagの高値同士、安値同士をそれぞれ線で結ぶ
- 2本の線が収束している箇所を探す
- ブレイクアウトの方向を確認してエントリー
3. 高値・安値の切り上げ・切り下げパターンの変化
上昇トレンドから下降トレンドへの変化
上昇トレンド中のZigZagは、高値と安値がともに切り上がっていきます。新しい高値が前の高値より高く、新しい安値も前の安値より高い状態が続きます。
トレンド転換のサインとして、以下の変化に注目します:
- 高値の切り下げ:新しい高値が前の高値より低くなる
- 安値の切り下げ:新しい安値が前の安値より低くなる
この2つの変化が同時に起こった時点で、上昇トレンドから下降トレンドへの転換の可能性が高まります。
下降トレンドから上昇トレンドへの変化
下降トレンド中のZigZagは、高値と安値がともに切り下がっていきます。新しい高値が前の高値より低く、新しい安値も前の安値より低い状態が続きます。
トレンド転換のサインとして、以下の変化に注目します:
- 安値の切り上げ:新しい安値が前の安値より高くなる
- 高値の切り上げ:新しい高値が前の高値より高くなる
この2つの変化が確認できた時点で、下降トレンドから上昇トレンドへの転換の可能性が高まります。
ZigZagでの確認方法:
- 直近3つの高値と安値をZigZagで確認
- 高値・安値の水準変化をチェック
- パターンの変化が確認できたら、新しいトレンドに従ってエントリー
ZigZagを使ったサポート・レジスタンス分析
ZigZagは、レジスタンスライン・サポートラインを確認するのにも役立ちます。
レジスタンスライン(抵抗線)の引き方
- ZigZagで示された高値同士を線で結ぶ
- 3つ以上の高値が同じような水準にある場合、その水準がレジスタンスライン
- 価格がこの線に近づいた時は、反発下落の可能性が高い
サポートライン(支持線)の引き方
- ZigZagで示された安値同士を線で結ぶ
- 3つ以上の安値が同じような水準にある場合、その水準がサポートライン
- 価格がこの線に近づいた時は、反発上昇の可能性が高い
レジスタンス・サポートでの簡単トレード
エントリーポイントの判断
- レジスタンスライン付近で売りエントリー
- サポートライン付近で買いエントリー
損切りラインの設定
- 売りポジション:レジスタンスラインの少し上に損切り設定
- 買いポジション:サポートラインの少し下に損切り設定
利確ポイントの設定
- 売りポジション:次のサポートライン手前で利確
- 買いポジション:次のレジスタンスライン手前で利確
注意点
レジスタンスやサポートで必ず反発するわけではありません。
逆に、レジスタンスやサポートを突破した場合は、その方向に大きく動くことがあります。
複数の時間足でトレンドの方向性を確認したり、他のインジケーターも使って、レジサポ分析の精度を上げるとよいです。
マルチタイムフレーム分析での活用法
ZigZagは、複数の時間足で同時に使うことで、より精度の高い分析ができます。
基本的な考え方
- 長期時間足:大きなトレンドの方向を確認
- 中期時間足:エントリータイミングを計る
- 短期時間足:正確なエントリーポイントを見つける
具体的な時間足の組み合わせ例
デイトレード向け
- 日足:大きなトレンド確認
- 4時間足:中期的な流れ確認
- 15分足:エントリーポイント探し
スイングトレード向け
- 週足:長期トレンド確認
- 日足:中期的な流れ確認
- 4時間足:エントリーポイント探し
押し目買いのトレード例
- 上位時間足でトレンド確認
- 日足のZigZagで上昇トレンドを確認
- 中位時間足で押し目を確認
- 4時間足のZigZagで一時的な調整を確認
- 下位時間足でエントリー
- 15分足のZigZagでロングエントリーできるところを探す
全ての方向が揃ってるときはチャンス
全ての時間足が同じ方向で揃っている時は、トレンドの信頼度が高いです。
強い上昇トレンドの例
- 週足:上昇トレンド
- 日足:上昇トレンド
- 4時間足:一時的な調整後、再上昇
もしこんな相場を見つけたら、ロングで積極的に仕掛けたいですね。
フィボナッチリトレースメントとの連携
ZigZagインジケーターとフィボナッチリトレースメントを組み合わせることで、より精密な分析が可能になります。
フィボナッチリトレースメントとは
フィボナッチリトレースメントは、相場の押し目・戻りの深さを予測するツールです。主に以下の数値が重要視されます。
- 23.6%
- 38.2%
- 50.0%
- 61.8%
- 78.6%
ZigZagとの組み合わせ方法
- ZigZagで重要な高値・安値を特定
- その高値・安値間にフィボナッチを引く
- フィボナッチレベルでの反発を狙う
実践例:上昇トレンドでの押し目買い
- ZigZagで上昇の起点(安値)と頂点(高値)を確認
- この2点間にフィボナッチリトレースメントを設定
- 38.2%、50.0%、61.8%レベルでの反発を狙って買いエントリー
実践例:下降トレンドでの戻り売り
- ZigZagで下降の起点(高値)と底値(安値)を確認
- この2点間にフィボナッチリトレースメントを設定
- 38.2%、50.0%、61.8%レベルでの反発を狙って売りエントリー
ZigZagとエリオット波動理論の組み合わせ
エリオット波動は、相場の動きを波のパターンで分析する方法です。ZigZagインジケーターを使うことで、このパターンを見つけやすくなります。
エリオット波動の基本パターン

上昇5波動
- 第1波:初期上昇
- 第2波:調整下落
- 第3波:主要上昇(最も強い上昇)
- 第4波:調整下落
- 第5波:最終上昇
下降3波動(修正波)
- A波:初期下落
- B波:調整上昇
- C波:最終下落
ZigZagを使った波動カウント方法
エリオット波動のカウントは、ZigZagを使えば簡単です。以下は一例です。
基本的な波動カウント手順
ステップ1:時間足の選択
- 週足または日足で大きな方向性を確認
- 4時間足で中期的な波動を分析
- 1時間足で詳細な波動をカウント
ステップ2:ZigZagの設定調整
波動カウント用の推奨設定:
- Depth = 20(長期的な波動を重視)
- Deviation = 8(大きな動きのみを抽出)
- Backstep = 5(波動の重複を避ける)
ステップ3:起点の特定
- 明確なトレンド転換点をZigZagで確認
- 大きな安値または高値を波動カウントの開始点とする
- この点を「波動1の開始点」として記録
ステップ4:5波動パターンの確認
上昇5波動では、価格が波のように5つの段階で上昇していきます。ZigZagを使って、これらの波動を明確に区別していきましょう。
各波動の特徴:
- 第1波:新しいトレンドの始まり、比較的小さな動き
- 第2波:第1波の50-61.8%程度の戻り
- 第3波:最も強い動き、第1波の1.618倍以上が目安
- 第4波:第3波の23.6-38.2%程度の戻り
- 第5波:最終的な上昇、第1波と同程度の長さが多い
ステップ5:波動の長さと時間の関係チェック
- 第3波が最短波動になってはいけない
- 第2波と第4波の調整パターンは異なることが多い
- 第5波と第1波の値幅とほぼ同じ長さになることがあります
第1波の値幅を第4波の終点から測定して、第5波の値幅を予測できます
ステップ6:修正波(ABC波動)の確認
5波動完了後は、通常3つの波動からなる修正波が発生します。この修正波はA波(下落)、B波(戻り)、C波(最終下落)の3つの波で構成されます。
修正波は前の5波動上昇に対する調整局面となります。
波動カウントを使ったトレード一例
第3波を狙ったエントリー
- 第1波と第2波をZigZagで確認
- 第2波の終了後、第3波の開始を狙ってエントリー
- 第3波は通常最も強い動きになる
第5波終了を狙った逆張り
- 第5波の完成をZigZagで確認
- 5波動完成後の反転を狙った逆張りエントリー
エリオット波動のトレード注意点
波を数えるのは意外と難しい
同じチャートでも、Aさんは「今5波目」、Bさんは「まだ3波目」といった感じで、人によって波の数え方が違うことがよくあります。
後から見ると簡単、でもリアルタイムは難しい
過去のチャートを見ると「ここが1波で、ここが5波」と簡単に分かります。でも実際にトレードしているときは、今がどの波なのか分からないことが多いです。
完璧な波はめったにない
よく見るエリオット波動の綺麗な波の形は、実際の相場ではあまり見つかりません。多少崩れた形でも波として考えてよいかもしれません。
ZigZagインジケーターのまとめ
ZigZagは、トレンドや相場の分析が簡単にできるインジケーターです。今回ご紹介した内容を参考に、ぜひあなたのトレードに活用してみてください。
ただ、ZigZagはリペイントするので、リアルタイムでのトレードでは慣れるまでよく観察や練習をしましょう。
最初は基本的な使い方から始めて、少しずつ応用的な手法にチャレンジしていくことで、あなたもきっとZigZagマスターになれるはずです!